バスキングから見る「笑顔効果」とは?スマイルで客を引き込もう!
バスキングで得られるものって何だと思いますか?
演奏スキルのアップ?
大きな仕事を得るためやキャリアのステップアップとして?
チップ収入?
では、まずはわかりやす〜く、チップを多く得るために、一番効果的なのは何でしょうか。
1、継続した演奏とそのスキルの高さ?
2、音楽家としての才能やカリスマ性?
3、通行人とのコミュニケーション力?
4、見た目の良さや外見のインパクトなどのルックス?
この4つのどれもが路上演奏にとって重要なポイントであると同時に、より多くのチップ獲得へ効果があるものだろう、と、一般的にイメージしやすいかな、って思います。
しかし、しかし。
実は、意外なものがバスキングには一番「効果アリ!」なのです!
「バスキングって?」という方は、以下記事のバスキングトピックの第一章をご覧頂けたらと思います。
バスキングで効果的そうに見えて、そうでないもの
バスキングをやる事で得られるのは、継続する事で演奏スキルの向上が期待できる事や、道ゆく誰かに認めれる事によって、大きな仕事を得たり、キャリアのステップアップになることもあります。
その他にも、経験や出会いだったり、色々得ることがありそうですよね!
海外のバスカー達が一番に目的としているのは、シンプルに「チップ収入」です。
練習の場としてや、チャンスを掴むための場としてバスキングしている人はほとんどいません。
演奏のスキルアップをするならば、集中できる環境が整うスタジオや自宅で練習を8時間続けていたほうが、確実にスキルアップします。
大きな仕事を得るためには、自らが動いて求めるジャンルの仕事にトライしていくまで。路上でチャンスを掴めることを狙っている人はほとんどいません。
既にプロとして活動キャリアがあり、その仕事の合間でバスキングを行ったり、プロ活動でままならない部分をバスキングで賄っているバスカーが、実は海外にはとても多いんです。
隙間時間でお小遣い稼ぎのイメージにやや近い?かもしれませんが、バスキングは過酷な労働なので「仕事」として気合入れてやってる方ばかり。楽しているバスカーはいません。
厳密に言えば、「チップ収入」がメインの目的だとしても、バスキングを公の場で行う事での継続力や即興性など身につくので、バスキングの価値もとっても高いものであり、その経験が他の仕事にプラスになる相乗効果もあり、チップ以外に得るものは多いんですけどね!
わかりやすい!海外の人たちのバスキングへの反応
まずは、最初にお話ししました、通行人を呼び寄せるのに効果的と予想されがちな、4つのポイントのお話しから。
- 継続した演奏とそのスキルの高さ
- 音楽家としての才能やカリスマ性
- 通行人とのコミュニケーション力
- 見た目の良さや外見のインパクトなどのルックス
これらは、一般的に多くのチップを得るために効果のありそうなイメージがありますが、実際には、この中にも特段、重要ではないもの・力を入れたところでチップ収入アップには繋がらないものもあります。
それらの説明の前に、まずは言えることは、ひとつ。
海外のバスキングは「分かりやすい」んですよ。
良い(と、通行人に思われている)バスキング=チップが多いです。シンプル。
ただし、バスキングのチップは最低でも1時間以上は演奏を続けてないと、多く稼げる日かどうかの判断はできないので、「たまたま通りすがりにちらり覗いたギターケースのコインが少量だった」からといって、そのバスカーが悪いとは言えませんので、あらかじめ。
海外のバスキングは、オーディエンス(通行人)の反応が、良くも悪くも分かりやすいです。
感謝や応援、「イイね!」の気持ちは、全てコインで示されます。
声援が多いからよかったとか、写真をいっぱい撮られたからよかった、というのはまずありません。
それらは海外のバスキング市場では全くあてにならない情報。
単純に、良いバスカーはチップを稼ぎます。それが海外のバスキングの現実です。
では、前述しました「4つのポイント」について、それぞれに説明をします。
まず「継続した演奏とそのスキルの高さ」。
演奏のスキルが高いとか、その継続性や、音楽提供において、通行人から認められている場合、それだけチップに反映されますので、チップの量が「その日の自分の実力」です。
多ければ、良い。少なければ、悪いのです。
演奏のスキルが高い人ほど、チップを稼ぐという事実はあります。逆に、基本的にスキルはまあまあ・標準なんだけど「この日はすごくチップが入った!」という場合は、その時はかなり良い演奏をしていた、ベストをつくせていた・・という目安になります。
「音楽家としての才能やカリスマ性」これも同じで、凄い!とか、魅力的!と思われていれば、如実にチップに反映します。量が多ければ受け入れられているという事になります。
しかし「通行人とのコミュニケーション力」「見た目の良さや外見のインパクトなどのルックス」この2つは、はっきり言ってしまえば不要です。
通行人とコミュニケーションを取ることは、もはやバスキング外の行為であり、それが全てポジティブに取られるとは限りません。
公共の場で迷惑と取られることもありますし、何よりも演奏した方がいいです。1分でも多く演奏した方がいいですね!
誰かと会話をしている時にチップは入らないですから。通行人も(ギター持ってずっとお喋り?何やってんだ?)と思います。
バスキング中にコミュニケーションを取る事で喜べる事というのは、路上でたまたま会ったり、再会した友達と会話することでのリラックス効果やささやかなブレイクタイム、というだけです。
しかし、そんな最中も、友達と話せば話すほど時間は経ち、バスカー本人のチップ収入が減り、他の通行人には邪魔扱いされます。
ですから、見ず知らずの通行人とコミュニケーションを取る必要は全くありません。コミュニケーションはパフォーマンスでとることが、自分にとっても、相手にとっても望ましいことなのです。
ルックスも関係なし。
どれだけ目立つ格好をしようと、どれだけルックスがよかろうとも、演奏がよくなければチップは入りません。残念ながら・・・
勘違いして目立つ格好をしたり、見た目を磨いたりする人もいますが、バスキングはメディア活動とは違います。通行人が欲しいのは音であり、良し悪しを判断しているのは聴覚であり視覚ではありません。
以上、バスキングをやる事で得られるもの、それに対して効果的なことや、チップに反映されると思われる一般的な要因の4つ、その実情をお話しさせて頂きましたが・・・
実は、これに加えて「5つめ」が存在します。
これは「ポジティブな効果」を発揮します。
驚くべきバスキング上の笑顔効果!
それは「笑顔」です。
「演奏と関係ないじゃん!」「ルックスと同じような感じじゃん!」と、思いますよね。そうなんです、演奏とは全く関係ないのに、スキルアップやチップ収入のアップに繋がります。
笑顔でバスキングをすることが、大きな仕事のチャンスを掴むことに繋がるかどうかは分かりませんが・・・
ルックスなどの外観を気にするよりは、よほど好感度を得られます。まあ、当然ですよね。(笑)
笑顔によって、楽しいと感じることが増えますので、継続力の源になります。当然、回数を増やせば増やすほどにスキルは上がります。
楽しいと感じる事については、後述にて。
しかし、バスキングって、毎日長時間やってると結構(肉体的にも精神的にも)しんどいので、この「笑顔」が抜けている人は多いのです。
バスキングを見かけることがあれば、ぜひ意識して見てください。
また、真剣に演奏をしていたら、やはり真剣な表情になります。
それはそれで、悪いことはありません。ステージで真剣な面持ちで演奏するのは当然です。
しかし、そこはバスキングという不特定多数の人たちが通る場所での演奏であり、自身の演奏を聞くのを目的としたお客様が集まるリサイタルとは異なる、という事がポイントでもあるのです。
通行人の気分を癒すための音楽提供という目的には、演奏の技術や、場所に見合った音楽ジャンルの演奏という以外にも必要な「雰囲気作り」が必要だったりします。
笑顔が印象的なリヴァプールのバスカー
私がバスキングを始めたのは、リヴァプールのマシュー・ストリートで見た男性バスカーがきっかけでした。
実は・・・そのバスカー、そんなに演奏が上手ではなかったんです。(笑)
しかし、彼はものすごく楽しそうに、満面の笑顔で歌っており、道ゆく人々全てに笑いかけるようにバスキングをしていました。
一瞬で心を掴まれ、なぜか涙が溢れてきたんですよね。
そこで思ったのが(下手でもいいんだ!)と。(笑)
下手だから、自分には無理だから・・・と諦める必要はなく、下手でも、自分自身が楽しんでいる事が大事であり、音楽へ愛をもっている姿勢が大事であり、その雰囲気で周りに幸福感を与え、感動を与えることができると思ったんです。
今でも、「印象に残っているバスカーは誰?」と聞かれれば、その人以上の人はいませんね。
口をパクパク・・なのにチップが仰山!
バスキングの新人時代のこと。思った以上に過酷だったので、それまでどんな無茶をしても喉が潰れたことのなかった私でも、ある日突然、喉を枯らして歌えなくなったことがあります。後にも先にもその時一度だけですが・・
その日は、1日中、声が出ませんでした。(笑)
私はギタリストではありませんから、当然インストでは音楽も形になりません。
口をパクパクしながら、ストロミングのみでへっぽこな「歌なし伴奏」を弾いていました。ダサいですよ、かなり。
(恥ずかしい!)と思いながらも、口をパクパクしている自分に、ふとウケたんですよね。何やってんねや!そこまでして!と。
でも、歌っていることをパクパクする事で伝えたかったんですかね。(苦笑)
そんな自分に、ひとりでウケてしまい、爆笑したいのを堪えながら終始ニヤニヤとしてたんです。
そしたら・・・
ただのストロミング演奏なのに、チップが入る、入る!(驚)
不思議に思っていた私に、ある通行人が一言。
「I love your smile!Thanks!」(笑顔がいい、ありがとう!)
なるほど!と思いました。
私が自分自身の置かれた状況にウケており、半ばやけくそ状態でウケまくって演奏していたのが、周りから見ると「なんと素晴らしい笑顔!」と思っていたようです。(笑)
通行人の皆さんは、笑顔で作り出した場の雰囲気に感謝してくださったんですね。
いやはや、全く演奏とは関係ないですよね。お恥ずかしや。(笑)
しかし、演奏以外の面でチップ収入の効果を得た事を実感した瞬間でもありました。
ストライキで閑古鳥が鳴くバスキング環境なのに・・・
ロンドンブリッジ駅構内で演奏していた時のこと。
その日は、運悪く、ロンドンブリッジ駅に停車する地下鉄ラインでのストライキがあり、駅周辺の人が極端に少なく、閑古鳥が鳴いているといった雰囲気でのバスキングでした。
あまりに人が通らない、誰も客がいないような環境だったので、半やけくそで(もう、一人で遊ぶしかない!)と思った私は、日本のアニメソング(ちょっと面白い系の歌詞のもの)や、コテコテのアイドルソングなどを演奏して歌い、一人で爆笑してたんですよ。
アホですよね、すみません・・・(笑)
こうやって、自分で楽しみを見つけるのもバスキングで大事なことです。
だって、そこには、たったひとりですからね。変に真面目すぎると心が折れますよ。
しかし、ストライキで人がいないとはいえ、まばらに・・ポツン、ポツンとたまに人は通るわけです。通路ですからね。
一人でバカやってるのも見られると恥ずかしいので(誰か来た!)と気づいたら、ビートルズなどに急遽コードを変更してはいたんですが・・・
どうやら様子がおかしい。
全員がチップを置いていくんですよ。ポツン、ポツンの人たちが。
あえて、(わざわざ私の前を通らなくてもいいのに)こちらに向かって来ているような感じにも見えるのです。
私は「普段歌えないようなちょっと恥ずかしい歌」みたいなのをチョイスして、一人遊びを楽しんでいたものですから、(いやいや、こないでよ!笑)なんて思っていたんですよね。
どんだけやねん、みたいな。(笑)
バスキングよりも、ストライキで人がいない状況で遊ぶことが優先かい!(笑)
にもかかわらず、イギリス人達が「Nice!」「Good!」と言ってチップを置いていくもんだから、恥ずかしいというかなんというか・・・
そんなこんなで、そのおふざけ演奏を続けていたところ(続けるな!笑)、やっぱり、向こうからスタスタと、あえてこちらにやって来ているように人が近づいてくるんですよ。
(恥ずかしいなあ)と思いながら俯き加減の私。
はっ、と足元を見たら、ギターケースには20ポンド札が!
顔を上げると、そこには駐在員らしき日本人ビジネスマンの顔。
「遠くで楽しそうに演奏している人が見えたんで、近づいてみたら〇〇(曲のタイトル)だったから驚いたよ。日本人なんですね。頑張ってください!」(ビジネスマン)
その方と少し話したところ、遠目からあまりにも楽しそうな雰囲気が見えたから、嬉しくなって近づいたら、楽しそうに笑顔で演奏していたのでチップを渡したくなって寄ってきたそうで。日本語の曲というのは、近くに来るまで全然気づかなかったんだそうです。
これも、どうやら笑顔効果らしいです。
本人は、一人で自己満足でウケていただけなのですが・・・・
ポツン、ポツンとしか人が通らない状況なのに、それらの人たちが必ずチップを置いていき、最後の最後に日本人の方が札を置いてくださった事で、普段よりもチップ収入が良かったという嬉しいオチでした。
無理やりでも笑うこと、その笑顔にも意味はある
上記の例は、私は決して「通行人さんに笑顔を与えよう」なんて思っていたわけではなく、単純に一人で「バカうけ」していただけなのです。
私自身はどちらかといえば普段から笑顔で演奏する方ではあるのですが・・・
実は、普段から笑顔で演奏しているつもりでも、それって全然、伝わるまでには足りてないという事なんですね。
公共の場や、一瞬で通り過ぎる人たちの前では、バカうけの爆笑でも丁度いいくらいなんです。
これって、日常でも同じじゃないのかなあと思います。
流石に、下品に爆笑して場の雰囲気に配慮していないという事もありますので、そこは常識内での注意は必要ですが、普段私たちが「嬉しい」「楽しい」と表現したつもりでも、相手に実はそこまで伝わっていない事って結構あるんじゃないかなあと思います。
また、笑顔って、やはり楽しくないと生まれてこないもの。
だけど、楽しくない事なんて日々日々、沢山あります。
そうした時、無理やりでも笑うことや、無理やり笑えることを探してわざと爆笑してみる、そんなナンセンスな部分から笑いを発生させる事でも、笑顔の効果っていうものは大きいんじゃないかなと思います。
それ以降、わざとらしいくらいに笑顔でバスキングすることも増えましたが(笑)、そういう時はやはり、バスキングの効果(チップや集客)も抜群です。
しかし人間ですので、時にどんよりとなる時もあります。結果は、分かりやすく、負の連鎖で散々なバスキングとして終わります。
辛くても無理やりでも笑っていきたい!と思うのでありました。
実践が難しい時もありますけどね・・・(汗)
笑顔が笑顔を呼び笑顔を作る
笑顔によってバスキングで得るものは、チップだけではありません。
自分が笑顔で演奏する事で、通行人の方が笑顔になります。
そんな笑顔の人たちから「Thank you」と笑顔で言われると、演奏しているこちらも「Thank you too!」と、その笑顔に対して、笑顔で感謝を伝えます。
そうすると、通行人の方も笑顔で手を振りながら立ち去ります。
そんな姿を見ると、なんだかとても嬉しくなり、また笑顔になります。その笑顔によってまた、笑顔の通行人が近づいてきて、笑顔を私に与えてくれます。
笑顔は連鎖反応です。
笑顔が笑顔を呼び、そして笑顔を作るのです。
笑顔によって作られたポジティブマインドは、そのまま持続し、家に帰る途中に立ち寄ったお店でお会計の順番に誰かが横入りしてこようとも、「どうぞどうぞ」と笑顔で譲ることができたり、店員さんと楽しく会話ができたりします。
少し嫌なことがあったとしても、笑顔の記憶のパワーに消されてしまいます。
そして、眠りにつき、翌朝になり、近所のイギリス人に「おはよう!」と笑顔で声をかけられると、1日が笑顔で続くような気分になります。
反対に、おはよう!と声をかけたのに怪訝な顔でスルーされると、笑顔に縁のない1日が始まりそうな「気分に」なってしまいます。
何事も、気分によって物事が左右されてしまうことがあり、その気分が占める割合もとても大きいと思います。
バスキングは「演奏をすること」であって、演奏スキルもなく、プロ意識もなく、お遊びだけでは絶対にダメです。(曲選びで遊んでしまった私もいますが、一応演奏は止めることなく続けてました。笑)
しかし、笑顔でいること、どんな状況でも通行人が不安にならないような雰囲気をバスカーが作ることは、一番大事なことであると個人的には思っています。
相手を笑顔にする事は難しい。自分が笑顔になるのは自分の意思。
どんなに良い演奏を聞いても、どんなに美味しい料理を食べていても、受ける側の人間が怒っていては、その演奏も味も半減します。
演奏者やシェフがどれだけ力を込めようとも、受ける側が怒っている事を変えることはできず、また、悲しいことや辛く苦しいことがあるのかもしれません。第三者には理解することも、どうすることもできず、その人本人にしか感情のコントロールはできないのです。
ですが、自分が笑顔になることはできます。
怒っている人と一緒に怒ったり、一緒に悲しんだりすることも、時には大事です。
しかし、それが延々と続くと、まさに怒りや悲しみの連鎖になります。
笑顔を与えることで、相手が笑顔になるきっかけを作ってあげるというのも、大切な事ではないでしょうか。
リヴァプールのバスカーに出会った時、私は辛いことの連続でどうしようもない絶望感がありました。
しかし、そのバスカーの笑顔の演奏をみた時、辛い、どうしよう、何でだろうという「振り返り」や「立ち止まり」の意識が続いていたのが、一瞬で「やろう!」という未来の意識に変わりました。
バスキングだけでなく、笑顔には絶大な効果があります。
日常的にも取り入れたいと思っています。
分かりやすく、バスキングチップの例でご紹介しましたが、実際にバスキングでも効果は絶大ですので、バスカーさんは一度お試しください。(笑)
まとめ
今回は、人間が持つ笑顔のパワーとその効果についてを、バスキングを例に上げてご紹介しました。
バスキングをはじめる方への、良いバスキング方法のアドバイスのひとつとして以外にも、日常生活の参考にもして頂けたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございます。