What is the busking? バスキングって何だろう?
Busking(バスキング)ってご存知ですか?
バスキングとは、路上でパフォーマンスをする事で、日本で言うところの路上演奏やストリートパフォーマンスすることを指します。
つまり、バスキング=大道芸の事なのです。
「Busking」(名詞)、そして「Busk(バスク)」という動詞は、「Busker」という”街頭演奏家”という言葉から来ています。
路上でパフォーマンスする人のことは「Busker(バスカー)」と呼びます。
「バスカー」は、パフォーマーつまり大道芸人のことを指しますので、演奏者に限らず、パントマイムや、銅像の姿をしてパフォームしている人、ダンスや絵描きなどを路上で行っている人も皆バスカーという事になります。
「バスキング」とは「バスカーが大道芸をする事」という意味なんですね。
そんなバスキングについてお話しします。
バスキングって何?
バスキングの言葉の由来はイギリス発祥ではなかった?
イギリスで「Busking(バスキング)」という言葉が最初に使われたのは、1860年代の中頃と言われています。
この「バスキング」という英単語の響き、格好いいですよね。
最近でこそ、日本でポピュラーになりつつある言葉であり、幅広い人達に使われるようになってきた「バスキング」という言葉ですが、実はかなり昔から日本のロックファンや、中でも特にUKロックが好きなミュージシャンにとっては知られていたマニアックかつ、クールなワードでした。
「イギリスに行ってバスキングしたい!」
「バスキングといえばイギリス!」
そんな風に言う人も多く、それだけイギリスの言葉というイメージがとても強かったんです。
実際に英単語ですしね!
『イギリスの地(もしくは海外)で、ストリート(路上)でパフォーマンスを行う事を指す言葉が、”バスキング”』というイメージが強かった頃では、日本で言う「ストリート演奏(ストリートミュージシャン)」と「バスキング(バスカー)」という言葉、これらは全く別のものとして受け止められることも多かったのです。
そんなバスキング。
実は、「Busk」という動詞の元となった「Busker(バスカー)」という言葉の語源は、スペイン語の「Buscar」に由来しているのだとか。
「Buscar」というスペインの言葉は「To Seek(求める)」という意味。
スペイン語である「Buscar」は、インド・ヨーロッパ語の「bhudh-skō」という言葉が進化したもの。「bhudh-skō」は、「勝つ – 制服する」という意味を持ち、様々な「路上で行うこと」に対して使われてきた言葉だそうです。
少し注意したいのは、この由来となっているスペインの言葉は、今でもスペイン語で使用されてはいるものの、セクシャルな意味合い(所謂街頭に立つという意味や、愛人を準備するという意味)を表す言葉とされています。
語源の使用は避けた方がよさそうですね。
「バスキング」とは「大道芸をする」こと
バスキング、大道芸、路上演奏・街頭演奏、ストリートパフォーマンス、これら全部同じ意味です。
言葉の表現の違いというだけですね!
ついでに言うと、「流し」と言う言葉もこれに該当します。
「流し」は、日本独特の言葉で古くから存在する、路上やレストランなどで演奏を披露しチップを得る演奏家の事です。
筆者は「流し」からの英国バスキングデビューでした。(照笑)
「バスキング」という言葉の中には、披露する芸のジャンルの縛りもありません。
音楽演奏だけでなく、ダンスやパントマイム、銅像姿などのアートパフォーマンスや、絵描き、伝統芸能の披露など、様々な大道芸を総称して「バスキング」と言います。
「バスキング」は英単語でありスペイン語由来ですので、当然、古くから世界各国で街頭演奏やストリートパフォームの用語として使われている言葉です。
しかし、日本で行う路上演奏を指す言葉は「バスキング」というよりも、「ストリート」や「ストリートミュージシャン」という言葉の方がその行為をイメージしやすく、しっくりきますし、一般的にも浸透しています。
「バスキング」という言葉も日本でポピュラーになりつつはありますが、まだまだ特別なイメージを持たれているような・・・どことなく「あえて使っている感」が否めませんよね。
お友達にストリートパフォーマンスの告知をするとしても「ちょっとバスキング行ってくる!」と伝えるよりも、「ストリートで演奏してくる」と伝える方が一般的でしょう。「バスキング」では通じない事の方が多いですからね。
あえて「バスキング」と使うとしたら、イベントとしての言葉のインパクトを狙って使用している事の方が多いように思います。
でも、実際には「ちょっと行ってくるぜ!」っていうノリこそが、まさにバスキングなんです。基、それがバスキングなのです。
バスカーたちにとっては、バスキングは構えてやるような行為ではなく、腕慣らしであったり、生活の一部、日常の一コマ・日課であったり、人によってはそれを生業としてごく当たり前におこなったりするもの。
段取りをしてリストを作って路上でイベントするように盛り上げて行う・・・となると、それはまさしく「イベント」。もはや、「バスキング」では無くなっちゃうのです。
その辺の、イギリスのリアルなバスカーの感覚やバスキング事情も、追々お伝えしていけたらと思います。
冒頭でお伝えしたように、今のように「バスキング」という言葉が日本でもチラホラと聞くようになる以前では、日本のロックファンやブリットポップ好き音楽青年にはおなじみの言葉。また、マニアックな海外音楽冒険やチャレンジを連想させる活動ワードでもあり、「イギリスで路上演奏する事」が「バスキング」として認識されていた時期も、ありました。
現在では、そういったマニアック感もなくなり、徐々に「バスキング」という言葉が日本でも浸透しつつある事は大変喜ばしいものの、少しミーハーな感じでバスキングが取り上げられていたり、そのワードを大袈裟に使われている場面もあるような気もするので、そこは少し恥ずかしい感じが・・・・正直なところ、ちょっぴりしちゃうんですよね。
とは言え、それも「文化の違い」の一言に尽きます。
「バスキング」はイギリスの人たちや、バスキング文化が盛んな他の国の人たちにとっては日常的なワードでも、日本人にとっては身近なワードではないのです。
改めて、バスキングとは、大道芸をすること。
ですから、大道芸人(つまりパフォーマー)が自らの行動を示す際に使う言葉が「バスキング」。
そして、パフォーマーが路上で何かパフォームしていることを人々が指して発する言葉が「バスキング」です。
また、あえて敷居高く発するワードでもありません。
ご縁あってこのページに足を運んでくださった方で、「バスキングに興味ある」「やってみたいな」って感じた方は、ぜひぜひ「自然に出てくる当たり前の音楽用語」として使用し、バスキングを行ってくださいね!
「来月、バスキングのイベントやるぜ!」というのはなんとなく言葉としてオカシイ感じですが、「バスキング?うん、やってるよ。」「明日バスキングやるよ。」というような使い方が、ナチュラルであり、同時にクールです。
アメリカでも古い歴史のあるバスキング
「イギリスで路上演奏をする事」として知られていた「バスキング」という言葉。
それは、イギリスの地でバスキングという文化が古くからあるため。
しかし、バスキングの歴史は何もイギリスだけではありません。
ブルーズミュージシャンにとってもバスキングは昔から馴染み深い言葉なのです。
19世紀後半にアメリカ南部から発祥したブルーズ音楽は、当時はアフリカ系アメリカ人の心の内を表現する音楽手法として、身近な存在であるギターを使い、弾き語りをする事から始まっています。
つまり、バスキングです。
特に、ミシシッピ州デルタ地域からは多くのブルーズマンを輩出しており、後にデルタブルースと呼ばれるようになるブルーズ音楽を奏でたアーティスト達も、ギター片手にアメリカ大陸を渡り歩くバスキング巡業を経験しているのです。
ブルーズのレコードはイギリスへと海を渡り、後に音楽業界に革命を起こすビートルズや、ローリング・ストーンズをはじめとする多くの偉大なUKアーティストに影響を与えています。
ロックという音楽がポピュラーとなり、当時の若者たちがバンドサウンドに熱狂した時代。それはまさしく、現代に至るポップミュージックの地盤となっていると言えるでしょう。
その原点である60年代のUKアーティスト達(上記のビートルズをはじめ)に影響を受けたイギリスのミュージシャン達が、それら(60年代〜90年代ロックやポップ)の音楽を街頭で日常的に奏でながら現代のイギリスのバスキングスタイルを作っていきました。
そんなバスカー達の姿は、いつしかイギリスのミュージシャンにとってはごく当たり前の風景となり、音楽をやる者たちの誰もが通過する音楽経験の一つとなりました。
その歴史は長く、現代に至るまでに、ほとんどのイギリスのプロミュージシャンたちがバスキングを経験していると言えるでしょう。割と最近のアーチストで有名どころをあげると、エドシーランもそうですよね。
UKサウンドがどのようなジャンルとしてポピュラーになり進化していこうとも、そのルーツを辿っていくと、実はブルーズミュージシャン達の巡業(バスキング)が原点なのかも?しれません。
ただ、弾き語り巡業をするブルーズマンで「バスキングやってます」という人は少ないかもしれませんね。
ブルーズは、あくまで「ブルーズ」。その行為は、弾き語りでもなく、バスキングもなく、「ザ・ブルーズ」なのです。
実際に、アメリカまでブルーズ巡業を(弾き語りスタイルで)行った友人は、「アメリカでバスキングしてきた」とは言いません。「ブルーズやりながらいろいろ回った」って、言いますね。
突き詰めていくと、筆者の友人のブルーズマンは「俺自身がブルーズだ」と常々言ってますから。ブルーズマンが行うことは全てブルーズなのです。
ですから、ブルーズマンがバスキングしていても、それをバスキングとは呼びません。・・・なんて言ってしまうと、この章の意味がなくなってしまいますね、失礼しました。(笑)
主観ではありますが、やはりストリートパフォーマンスを指す言葉としての「バスキング」とは、イギリス用語である・・・ようなインパクトは未だに強いかもしれません。
Buskers(バスカーズ)
「Busker(バスカー)」と呼ばれるストリートミュージシャン達。
一体どんな人たちがバスキングをやっているんでしょう?
日本と海外で見ると、バスカーにも若干違いがあるようです。
どんな人がやっているの?
「個人」で行っているバスキングならば、プロを目指している方が演奏修行として、日々、即興的に延々と街頭で演奏を行っています。
イギリスの例で言うと、時間にして、1週間のうち7日間(毎日)行い、1日あたり4時間から8時間が普通ですね。少ない人でも最低2時間は行います。ただ、2時間程度ですと本当に「予定の合間でちょろっとやる感覚」です。
プロモーションの一環としてバスキングをやっている人の場合は、きちんと広告関係や場所などをセットアップし、ライブのような感覚で行っています。売り出し中の新人アーティストがやっていることが多いですね。
そういったセットアップ系ですと、時間にして短時間、30分から2時間程度が多いように思います。
総じて、ミュージシャンがバスキングをしている事には間違いありません。(笑)
印象としては、日本ではやはり若手のストリートパフォーマー(バスカー)が多いのかな?という気がします。あくまで印象です。
そして、ストリートからスター誕生も夢物語ではないのが日本。
「先日路上で演奏していたのを見たのに、いつの間にか有名人になってる!」なんてことも、日本では不思議ではない話しです。普段見かけるバスカーの中に「金の卵」がいるかもしれません。
イギリスでは、性別問わず、子供から70代の年配者まで、かなり豊富なバスカー人材が揃っています。
それら全てのバスカーが、必ずしも「ミュージシャンとして有名になるためのステップ」としてバスキングをしているわけではありません。
と、いうのも、イギリスのバスカー達は、既にプロとして活動している人がほとんどです。
過去にデビューをしていたり、リリース歴がいくつもある・・・なんて人ばかりなんですよ。
仕事の合間に腕慣らしとしてバスキングをしたり、演奏が好きだから暇つぶしに・・・なんて人も。
確実に日本と違うのは、プロモーションでおこなっているバスカーはイギリスにはいないというところです。(また別の機会に話したいと思いますが、イギリスではプロモーションとしてのバスキングは禁止されてます。)
また「他に仕事もないからバスキングしている」と言う人もいるんです。
イギリスのバスキング・ライセンス制度の目的のひとつに『一芸に秀でているものの、仕事が無く生活に困っている人へのサポートの場』としてや『何らかの事情で仕事が出来ない方』への、社会復帰の場の提供としても行われています。
バスキングは何のため?
演奏の腕試しや、度胸試し、自己表現の場所として、そして時に生活の収入を得るためなど、バスキングは様々な目的で行われています。
これらを全て一言でまとめると、「演奏したいから」ただそれだけになります。
まず、音楽を演奏したいという思いがなければできませんよね。
日本では、特にプロモーションの一環として行われる事が多いと思います。というか、もうそれが一番の目的ではないかと思います。
万人が行き交う路上では、多くの人にアーティストの存在や曲、歌や演奏などの技術を披露すると共に、アピールする事が出来ます。
プロモーションとして最適の場所ですよね!
「特別な場」としてや、「野外ライブ」というイメージを持って挑む人も多いと思います。
新人アーティストが、より多くのファンを獲得するための場や宣伝活動の一つとして、念入りにセッティングをしてライブ形式にして挑むのが、日本で目にするストリートパフォーマンスの印象です。もちろん中には、腕鳴らしや趣味として、気軽にふらっと演奏するようなストリートパフォーマンスを行う人もいると思います。
しかし、生活のためにストリートパフォーマンスをしているという人は、日本にはいないのでは。
海外では、バスキングを中心に生活している人がいたら、それは主に「生活のため」として活動している人が大半です。
イギリスでは、ほとんどのミュージシャンがバスキングを経験しています。
彼らは、ミュージシャンならごく普通に通る道として行っているだけで、バスキングが特別なものではないのです。
そして、バスキングを経験したミュージシャン達は、ライブ活動やレコーディング活動など、次のステップに進んでいきながら、時に合間でバスキングをする者もいます。
バスキングをやったり、やらなかったり。経験して次のステップに進んだらバスキングは卒業したり。つまり大抵のミュージシャンはバスキングを経験し、それをステップに違う仕事へと進んでいきます。
しかし、日常的に、毎日毎日イギリスでバスキングしているミュージシャンもいます。まさにザ・バスカーですね。
それらミュージシャンのほとんどは、バスキングを生業としているのです。
生活できるだけのチップを得るには、時間(継続力、忍耐力)もスキルも、そして体力も必要です。
彼らにとっては死活問題。
明日のパンを買うお金は今日のバスキングの稼ぎで決まるのですから、必死です。
中には(もう嫌だ・・・)なんて嘆きながら演奏を続ける人だっているのです。
バスキングで金持ちになったケースも!?
イギリスでバスキングのチップだけで生活すると考えると、どんなに演奏力の高いプロのミュージシャンでも、楽には稼げません。
過酷な肉体労働と言っても過言ではないのです。
むしろ、普通にアルバイトをしていた方がよほど楽です。
ただ、あまりにもそのスキルが高すぎたり、他では見れないような楽器演奏をしている場合、バスキングをやった方が、普通に働くよりよほど儲かるというバスカーも、一部に存在します。
バスキングのチップだけで家を購入したバスカーもいるんですよ。(笑)
生業として成り立つバスキング
イギリスでは、バスキングは一期一会の場。何よりの応援がチップなのです。
声援を送って立ち止まる人はほとんどいないけど、チップは入るんですね。
そのチップが微々たる量のバスカーもいれば、普通に働くよりもリッチになれるバスカーも時に存在するわけです。
つまり、イギリスで行うバスキングの評価は、チップ額に如実にあらわれます。
良い演奏したり、魅力的なパフォーマンスをするバスカーには沢山チップが入るんですよ。分かりやすいですね。
ですから、イギリスで「Yeah!」なんて声援(だけ)を盛んに送られたり、バンバン写真を撮られたり囲まれたりしたからといって、喜んではいけません。むしろ悲しむべきこと・・・
イギリス人は「演奏が良い」「好き!」と思えばチップを入れます。それが敬意です。
そして、バスキング中に演奏を中断させる人は(友人や知人などに遭遇した時以外は)まず、いません。それもミュージシャンへのリスペクトなんですね。
路上を行き交う人の中でごく普通な(まともな)イギリス人がバスカーの音楽に興味を持った場合、そして、そのバスカーの音楽をリピートして聴きたい!と思った場合は、インターネットなり路上なりで相手が勝手に探してくれます。
スカウト的な事やビジネスとして必要とされていれば、ビジネスカードをチップと共に置いていきます。
「他にどこでライブやってるの?」と音楽に興味ある風に声をかけられたり、ソーシャルメディアの交換を迫られたら、それはただのナンパですね。(笑)
まとめ
今回は、バスキングの由来をはじめ、バスキング行為そのものの初歩的な情報をご紹介しました。
日本と海外の多少の違いはあれども、バスキングって結構気楽に挑戦できそうですよね!
ミュージシャンを目指す皆さん、一度はバスキングデビューしてみませんか?
バスキング・カテゴリーでは、これから徐々にバスキングのその内側に迫っていきたいと思います。
次の記事では、バスキングの歴史を少し覗いてみたいと思います。
最後までお読み頂き有難うございます。