バスキングの歴史を覗いてみよう
楽器を奏でる人、歌う人、パントマイムをする人、ダンスをする人、口笛を吹く人、そして立ったまま動かない人など、思いつく姿を上げるとキリがないほど、大道芸には様々なパフォーマンスがあります。
そんなバスキング、一体いつ生まれたんでしょう?
「Busking(バスキング)」の誕生
「バスキング」としての誕生は、やはり、その言葉が生まれた時ですよね。
大道芸、路上演奏、ストリートパフォーマンス、いずれもバスキングですが、バスキングという言葉そのものの持つインパクトも大きいです。
あえて誕生とするなら、言葉の誕生は無視できません。
イギリスで「Busking(バスキング)」という言葉が最初に使われたのが、1860年代の中頃と言われているので、その頃から人々はバスキングというワードに慣れ親しむようになったと思われます。
バスキングの言葉の由来は、前回の記事で触れていますので、以下のページをご覧下さい。
大道芸の歴史
大道芸は、かなり古くから世界各地で行われていたようです。
古代より様々な方法で文化や伝統芸を街頭から発信し、その中には生活収入を得るための手段として行う人や、パフォーマンスで人々の健康回復に役立ったと言う例も!
もちろん、ミュージシャンが音楽を広めるために街頭演奏をしたと言う、現代のバスキングと同じ目的も多く、著名なミュージシャンへと成功を収めた人もいます。
日本のバスキングルーツは現代でも有名な伝統芸
日本では江戸時代から放浪芸が行われており、古くは室町時代の絵巻にも大道芸人が描かれていたと言われています。
大道芸の例としては、江戸時代より披露されている「南京玉すだれ」が有名です。
そして世界的に認知されている日本のバスキングの初期形態としては、19世紀の半ば頃よりはじまったと言われる、広告・宣伝活動として芸を披露するチンドン屋があげられています。
古くから引き継がれている文化が、日本のバスキングの原点でもあり、現代ではポピュラーとなっているストリートパフォーマンスのルーツなんですね!
海外の歴史
路上で芸を披露する事は、演奏やパントマイムなどのパフォーマンスという認識がありますが、元々は、西洋の商人達が路上で物を売る際の「口上」から始まったと言われています。
口上をはじめ、街頭で一芸を披露する姿は次第に日常的な風景となって行き、現在のバスキング文化へと繋がっていきます。
文化、伝統芸を公共施設で発信し、チップを得るという大道芸は、古代から世界各地で行われていました。
特に、ミュージシャンにとっての街頭演奏は、レコーディングなどの技術が発展する以前には、最も適した仕事(収入を得るための手段)のひとつと言われていたのです。
レコーディングの歴史といえば、1889年、エジソンの依頼によってブラームスがピアノ演奏した録音が、史上最古の録音と言われています。
録音技術が発展する前の19世紀~20世紀初頭は、Barrel Organ(手回しのオルガン)やピアノロールを使って音楽を作成する必要がありました。
昔は、オルガン・グラインダーのバスキングも多く見られていたそうですよ。
その最古は11世紀に遡る
一番最初の大道芸としては、絵の記録や人物像の記録などの諸説ありますが、イギリスにバスキングという言葉を連れてきたのは、ローマから地中海を沿ってスペインに旅をしていた大道芸人である、という説があります。
その大道芸人が、(バスキングをしながら)さらに北上してイギリスに渡ったことが、バスキングという言葉がイギリスで使われることになった始まりなのだとか。
イタリアでは、19世紀には多くのストリートミュージシャンの記録があると言われており、やはり「バスキング」としての誕生は19世紀の初期~中期かと思われます。
フランスやロシアでは、中世に大道芸の記録が残っているそうなので、歴史が古い文化なのですね!
ちょっとユニーク、だけど人に役立つための大道芸
アメリカでは、19世紀に旅をしながら薬を販売する医療業者が急増し、行く先で人々の気分や健康を回復させるために行った、医学関係のパフォーマンスが始まりとも言われています。
その街頭パフォーマンスに多くの人が魅了され、商品は常に完売だったとか。
19世紀から20世紀にかけて多くの楽器奏者が大道芸を行うようになったアメリカ。
とりわけフォークミュージックは、バスキング文化の中心となっていったのです。
そして、バスキングは1940年代初期よりミシシッピ州から、デルタブルーズを奏でる巡業ミュージシャンによってさらに普及されていきます。
ブルーズ3大キングのひとり、B.B. Kingも、デルタブルーズのバスキングがルーツと言われています。
バスキング名称の本拠地、イギリスでは?
「バスキング」という言葉のイメージが最も強いイギリスの大道芸。
古くより多くのミュージシャン達が街頭で演奏をするようになり、バスキングは人々にとってもごく普通で当たり前の日常的な風景になりました。
又、ミュージシャンにとってバスキングとは、誰もが通る道のひとつにもなっています。
しかし、公共の場での演奏は、公的に認められているわけではありません。
警察官の目を気にしながらも、黙認してくれている場所も僅かに存在し、そのピッチを求めて我先にとバスカー達は街へ繰り出します。
中には生活のためにチップを稼ぐ人も多く、死活問題として演奏をするバスカーも多いという事情から、次第に「縄張り争い」のようなことが増えていったのです。
トラブルが多発するようになり、2003年より、国はバスキングのライセンス制度を設ける事になりました。
そのため現在には、ライセンスを必須とするバスキングピッチが数多く設けられており、ライセンス所持者は決められた時間は「自分のピッチ」として、安心して演奏する事ができます。
また、ライセンスがなくとも、周囲に迷惑がかからず、バスキングピッチとして古くから親しまれている場所などでは、バスカーの活動が黙認されている事もあります。こちらに関しては、先人より引き継がれてきたクラシックなバスキングスタイルと言えるでしょう。
古くからのスタイルも、ライセンス制度後も、バスキングはイギリスの風物のひとつになっています。
まとめ
如何でしたでしょうか。
バスキングって、単なる路上演奏という表現に収まりきらない歴史と、それによる目的も色々あるんですね。
バスキングだけでも、バスカー達の様々な人生ドラマが存在しそうです。
バスキングという演奏舞台が一派的になった現代から、未来へどういう形で引き継がれていくのか、楽しみですよね。
いつか、空中バスキングなんかも行われたりして!?
バスキングは対人間、路上での人との関わり合いが必要不可欠ですので、どんなにテクノロジーが発展した現代でも、ネットを通じた演奏やAIによる街頭演奏では、バスキングとは呼べません。
過去から未来へ向けて、根本的には大きく変わる事のないものであるからこそ、その文化が途絶えることはないのでしょう。
街へ出てバスキングもなかなか楽しいですよ!
最後までお読み頂き有難うございます。