バスキングは個人事業主?フリーランサー?Self-employed(セルフ・エンプロイド/自営業)の申告は幾らから?

バスキングはSelf-employed(セルフ・エンプロイド/自営業)?申告は幾らからすればいい?

 

こんにちは。

本日もバスキングのアレコレを語っていきたいと思います。

 

以前のブログにて、バスキングのチップについてお話しさせて頂きました。

 

バスキングのチップは課税?非課税?稼いじゃったらどうする?

 

今回は、チップ=心付けの話しから、もう少し深い部分について探ってみたいと思います。

 

基本的には、バスキングは音楽家の「腕慣らし」や「度胸試し」ほか、「空いた時間で行うライブ演奏」でもありますが、中には生活苦で日銭を稼ぐために行っているバスカーも沢山います。

 

バスキングで得たチップは、いわゆる「心付け」のため、本来は課税対象ではありません。

しかし、バスキングと言う行為を「営利目的」と言うスタンスで行った場合、それによって得た金銭は当然所得となりますし、そのチップが莫大な金額となれば申告の必要も出てきます。

そして、チップ目当てで行うバスキングは完全なる就労行為となります。

 

現地で暮らし、現地で就労を行うことが可能なバスカーであっても、各バスキング・ライセンス発行団体のルールに基づいて行う事が必須であり、非ライセンスバスカーにとっても、線引きが非常に重要となります。

そのため旅行客が旅先でバスキングを行う事は、状況や事情により可能な場合もありますが、チップ目的で行う場合は不法就労と見做される可能性が高いので、注意が必要です。

 

さて、そんなバスキングを行う「バスカー」ですが、俗に言う「フリーランス」に属するのでしょうか?

 

フリーランスがチップを得た場合、申告は不必要?

 

 

Self-employed(セルフエンプロイド) とは?自営業のルール

 

Self-employed(セルフ・エンプロイド)とは、読んで字の如く、自分で自分を雇用すると言う意味です。

起業した方や自営業、いわゆるフリーランスもこちらに属します。

 

イギリスでインディー活動を行っていたり、企業に属せずともプロで活動しているミュージシャンは、大きく分ければセルフ・エンプロイド、もしくは(収入を得ていない場合)無職という事になります。

 

線引きは、年間1000ポンドから(2019年5月時点)

 

イギリス政府のルール上では、これらに属する人=自営業を開始した、開業したなどの人たちの総収入が年間1000ポンド(2020年現在=約14万円弱)を超える場合は、翌税年度の10月5日までに、Self-assessment(申告納税)に登録する必要があります。(2019年5月時点の公式アップデート状況より)

レジスターを済ませている方は、確定申告を行い所得を申告します。税額控除があればもちろん収入額は減ります。

 

申告の際に必要なものは、要約すると以下の書類です。

 

  • 収入証明・顧客からの収入を示す書類
  • バンクステイトメント(銀行取引明細)・入金記録
  • 請求書、領収書、収入書などのコピーやスプレッドシート
  • トレーディングや不動産の収入記録など
  • タックス支払い関連や控除対象となる証明書類があればそれらの記録

 

細かくは、各自の状況に合わせた必要書類や申告方法などを、Government UKの公式ページで確認する必要があります。

基本的には、日本で必要とする書類と同じと考えて良いでしょう。

 

バスカーはフリーランサー?

 

さて、気になるのが、バスカーはセルフ・エンプロイドに当たるのかどうかと言うところ。

 

チップには、領収書も請求書も収入証明も存在しません。

また、ライセンス所持バスカーであっても、それらの得たチップ総額を管理団体に申請する必要はありません。

 

つまり、1日に5ポンドのチップを得ても、100ポンドのチップを得ても、ゼロであっても、管理団体から見れば同じ「いち、バスカー」です。

チップを収入源とするか、しないか、どのようなスタンスで活動するかは本人任せです。

 

管理団体は、公共で演奏するにふさわしいか否かと、万一のトラブル回避のために問題のある人物か否かをある程度考えるためにも、バスカーをオーディションや公的精査によって厳選し、免許を与えているまで。

免許とピッチ(場所)を与え、それらのタイムテーブルを管理するまでが彼らの仕事であり、細かい問題は全てバスカー本人の自己責任となります。

当然、現場で喧嘩などが発生しても止めに来てはくれません。

 

基本は本人任せではありますが、以下のようなルールは存在します。

 

営利目的であってはならないという基本ルール

 

バスキングのライセンスを発行している各団体に共通するのは、「バスキングを営利目的としない事」ということを、ルールとして強要しています。

 

これは、申告関係も含めて、万が一の金銭や税金等のトラブルが起こった際、ライセンス発行元としては責任を持てない事の忠告でもあると個人的には考えています。

 

ライセンスを管理する各団体(管轄によって団体が異なります)は、営利目的で行わない事=心付けを受け取るのはOK・・・としてのバスキングを前提として路上で演奏する権利を与えていますので、極端な話し、その現場や関連業務で莫大な財産を築いたとして、バスカーの誰かが脱税をしていても、それは本人の責任となります。

 

営利目的とされる禁止行為は、主に以下です。

別の章でも紹介していますが、改めておさらいとして。

 

バスキングを行っている最中に、ビジネス取引をしたり(厳密に言えば名刺交換も禁止です)、自身の宣伝をしたり、CDなどの物販をしながらバスキングをするのはアウト。

名刺交換に関しては、みな普通にやってますね。(苦笑)すでにSNS時代となっているので、名前を聞かれて答えたら、それが名刺交換みたいなものですし、やはりマナーとして企業名などを書かれた名刺を渡されたら、返します。

私の場合は、フリーの名刺をもらった場合は、自身の名刺は渡しません。企業名記載の場合は、自身の会社名を出してトラブルに繋がる可能性は、かなり低いため、こちらもマナーとしてお渡しし、ご挨拶をします。

この辺は、他のバスカーも同じ線引きであり、身元不明の名刺(名前、肩書き、アドレス、電話番号だけ記載のもの)には自身の名刺を返したり挨拶したりはしません。それが良い人であっても、念のための自己防衛ですね。

 

ただ、名刺交換と言うよりも、名刺をチップ入れに投げ入れて去る人がほとんどです。改めて「私はこういう者だけど・・」と、声をかけてくる人は、ほとんどが企業にお勤めの方であり、取材依頼か、社内イベントの演奏依頼です。ここで、ルールを守っているバスカーの場合は、管理団体に報告をしますが、依頼を受ける事に対しNOと言われることはまず、ありません。(取材の場合は報告は必須です)

 

名刺交換行為に関しては「売り込みNG」という意味ですのでバスキングを営利目的につなげる行為の防止や、バスカー側から、公共の場を行き交う通行人に対して、音楽サイトや商業サイトを誘導する行為を懸念してのこと。なので、極端に言えば、バスキングピッチで「このサイトで私の商品を購入してね!」なんて誘導ポップを立てるのもNGに当たることに。

宣伝行為をしない限りは、社交的な成り行きとして、名刺や連絡先の受け渡しをする程度は、マネージメント側も暗黙で了承しているような感じです。

 

ただ、物販は完全にアウトです。その場でお金が発生しますからね!

ライセンスが必要となる場所で、CDなどを売っているバスカーがいたら、それは実はルール違反です。バレたらアウトな行為。貝になってあげましょう・・・

 

また、何らかの紐付けた活動で金銭を得ること、例えば、バスキング団体の名称を用いてイベントをしたり、CDを発売したりなど、商業展開することはNG行為に当たります。

例えば、私の属する「アンダーグラウンド」では、定期的にイベントを主宰したり、フィルム映像の依頼や、雑誌などのメディアで取材依頼を受けたりなど、所属バスカーのバスキングを紹介するメディアや商業に属する業務なども行っています。

それらは全て、管理団体のマネージメント伝にバスカーが依頼を受けますが、我々バスカーはそれら全て無償で受け、演奏や撮影などを行います。ギャラは発生しません。

 

個人で、バスキング現場で商業的行為をしたり、エンターテインメント活動をするにあたって、管理団体の名称を用いることは完全な営利目的となります。

特に、管理団体の名称を用いることは、企業名を用いるということ。事前の許可が必要となります。

ライセンス所持のバスカーは、管理団体のもとで活動をしているものの、その団体に雇用されているわけではありません。バスキングのピッチ(演奏場所)を離れれば、部外者です。団体名を用いて商業活動をしていたら普通に考えてアウトですよね。

 

 

流し歴長しの長老
それをやっちゃあおしまいよ!
新人ちゃん
えっ!寅さん?(汗)

 

もちろん、バスカーと名乗って活動するのは自由です。(笑)

あくまで、バスキング行為に営利目的を紐付けた活動を外部で行うこと=申告は確定ということ。

そして、それをバスキング現場で行っていた場合は、ライセンス所持者の規定違反行為となるので、それはルール違反であるということです。

 

ちなみに、私も、管轄のボスに「日本に活動を紹介したい」と伝えた上で、ブログを書いたり、撮影をしたり、過去に日本メディアの取材に協力したこともあります。普段より相談姿勢を保っているので、有難いことに快くOKを頂いています。

過去にバスキング関連を取材した方々曰く、確認業務に手続き、段取りがかなり細かいとのことでした。日本も同じだと思いますが、イギリスも想像以上に許可関係や、特に撮影にはかなりうるさいです。もしかしたら、バスカー本人が管理団体に確認した方が、許可を取るのは結構早いかもしれませんね。

 

何事も同じですが、悪用したり、先方にとって不本意に取られてしまうような事をしない限り、確認さえ行っていれば何の問題もありません。

 

基本的にはバスカーの自己判断になる

 

前述の通り、バスキングを営利目的として行った場合、セルフ・エンプロイド確定ということになり、また、それがもしも管理団体のルールに反する行為の場合は、ライセンス剥奪の可能性もあります。

 

基本的には、淡々とバスキングを行い「音楽提供」としている限りは、頂いたチップは心付けとして処理している人が多いでしょう。

 

また、バスカーにはプロとして活動をしていたり、インディー活動でも収入を得ている人が大半を占めています。

そう言った方々は、自身の音楽活動での申告をしているので、既にセルフ・エンプロイドとして活動しているわけです。

バスキング収入を副業として申告している人もいれば、合間での活動としている場合は心付けとしている人もいます。

 

また、バスキングのみで生活している人に限っても、中には生活苦で住居を持たない人も存在します。

その場合はBegger(路上で慈悲を乞うこと)との線引きも難しいところとも言えます。

 

いずれにせよ、バスキングの管理団体としては、団体への申告を強要していないため、本人任せとしか言えないという事になってしまうのです。

 

 

バスカーたちは申告の有無をどう考えている?

 

新人のバスカーには、この申告について色々と悩む人も多いのですが、長く活動するバスカーの先輩たちの答えも、実のところは様々です。

 

圧倒的に多いのは、すでに(音楽家として)セルフ・エンプロイドなので、申告に関しては随時相談しているという人ですが、基本的には、人々のフィーリングや時代によって変化する、確実性のない「チップ」であるため、バスキングそのものが生産性は低く、心付けとして考えるべしという声が多いようです。

 

冒頭で述べたとおりに、バスキングには領収書も請求書も収入証明もありません。

目の前の楽器ケースに、小銭がまばらに入っており、それを手掴みで集めて持ち帰るのみ。

その時点で、それを収入として考えている人は極めて少ないかと思います。

 

しかし、細かい人では、バスキングで使う楽器やアンプ、バスキング行為によって得た仕事の経費なども全て控え、日々のバスキングのチップ総額を記帳し、申告しており、堂々とバスキングを主体に活動しています。

 

それが出来るレベルの収入があればベストなのですが、実際に得ることが出来るチップ額というのは本当に人それぞれであり、技術面や奏者の人気面だけでなく、楽器や演奏ジャンルによっても違えば、先に言ったとおりに人々のフィーリングや時代でも大きく異なります。

とてもじゃないけど、そのチップでは生活の足しにもならない!という事がほとんどなので、傍目からは、一概には何とも言えない(分からない)ものでもあるんですよね。

 

結論としては、こんな感じかな?

 

  • バスキングの世界でバスカー名義として勝負をしていくならば、バスカーとして開業し、事実上のセルフ・エンプロイドとして活動する
  • 既に音楽家として自身の音楽活動で収入を得ているならば、バスキングで得たチップに関してはその額によっては専門家に相談する
  • 路上生活者として考えていくか、もしくはバスキングはあくまで趣味や腕ならしの粋に留めておく(心付けの枠としてやっていく)

 

バスカーとして開業するのはスバラシイ試みだと思いますよ!

 

まとめ

 

今回は、チップ=心付けの枠から外れ、バスキングを職業として本格的に開業した場合や、営利目的として活動した場合のアレコレに焦点を置いてお話しさせて頂きました。

 

基本的には、イギリスでフリーランスとして個人で就労し、年間1000ポンド以上の収入を得た場合は、申告の必要があります。

 

しかし、その金銭が定かでない場合やチップである事を考えた場合は、様々な状況によって異なる場合もありますので、チップ収入を目的として長く専門的に活動する場合は、専門家に相談する事が大切です。

 

それ以外で、腕慣らしや度胸試しで路上で演奏してみたい!という方は立場を弁えて、安全にベストな方法で行っていきましょう!

 

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 

 

 

 

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