こんにちは。
この章ではイギリスのバスキングのライセンス制度についての詳細や、意外な盲点や注意点などをご紹介しています。
今回は、前回ブログの続きになりますので、こちらの頁から入られた方は途中にわからないワードなどが出てくるかも?しれません。
具体的なバスキングライセンスの説明やライセンス取得に向けてのオーディションについて等は、前回ブログに詳細記しています。興味のある方はぜひ以下リンクもご覧ください。
ロンドンのバスキング ライセンス制度と、取得までのプロセス一例をご紹介!
それでは、上記の続きを失礼します!
バスキング活動が正式に認められたバスカーのみ所持できるライセンス。でも、取得した後はどんな感じなの?
まずは、ちょっぴりおさらいです。
オーディション合格という難関を突破し、その後の調査でも無事問題なしと認められ、見事ライセンスを取得したバスカーたち。
ライセンス取得バスカーは各発行元のマネージメントに属する「公式バスカー」つまり、国公認のバスカーです。
これで堂々とバスキングができるだけでなく、なんとなくステイタスがあるように?思えます。バスキング活動安泰、ばんざーい!なんてちょっぴり浮かれてしまいがち。
しかし。
前回ブログからご覧の方はご存知のように、ライセンスを取得したからといって発行元の団体から活動の保証をされているわけではないのです。
ライセンスバスカーは団体所属のアーティストってこと?
・・・と、いうわけではありません。
公式バスカーではあれども、彼らは皆、フリーのミュージシャンだったりアーティストです。
あくまで国は、バスカーに対してバスキングをする許可を与えたまでのこと。
雇われているわけでも、今後の演奏活動のエージェントとなってくれるわけでもありません。
「公式にやってOKよ」と、認められるということだけでも大変素晴らしいことです!
しかし厳密には「業務場所」を与えるというところまで。そこでの活動や管理は自己責任。
イメージ的には個人事業主のようなイメージですが、バスキングライセンスを掲げての営利目的の活動は禁止のほか、基本的に投げ銭は非課税(所得申請に値するか否かの判断は自己責任)というのもあるので、行ってしまえば無職のようなもの!?
そこの社員でもパートでもないのです。
バスカーは、被雇用者では有りません。
もちろん「私はtfl(アンダーグラウンド)で働いているんだ!」とは間違っても言ってはいけません。
バスカーとして団体名を名乗ることは良いものの、雇われていると勘違いされるような名前使用はいけません。
見事公式ライセンスをゲットしても、前述の通りに発行元の団体が生活の保証をしてくれるわけではありませんし、演奏者派遣登録をしてくれるわけでもないのです。
いくらなんでも無職は言い過ぎじゃない?って思うのですが、極端にいえばということで。(苦笑)
仮に、ライセンス制度のことやその免許獲得までに厳しい道のりがあるということを全く知らない人、あるいはバスキング文化自体を全く知らない人がバスキングをしている人を見たらどう思うでしょう。
演奏が好きなんだなーと、思うことでしょう。ですが違う見方の人であれば下手すると「Give me change」と言いながら路上に佇んでるのと変わり無く見えるかも?しれません。
そんな人から見れば我々バスカーは確かに「無職」ですよね。(汗汗)
無職みたいなもんで保証はされていないんだけど、公式ライセンス所持ということでマネジメントからの監視・管理はしっかりされているというワケですね。
うっすらとしたベールで守られているといえば守られているわけなので、監視・管理もありがたいことでしょう!ということで。(笑)
先ほど伝えた通りに投げ銭は「基本的には」非課税です。(状況によっては課税対象になりますので、各自の状況によって専門家に相談し、正しい判断でお願いいたします。)
なので、バスキングの管理団体・マネージントはチップにも一切関与しません。
チップを得れるかどうかもバスキングが終了するまで勿論誰にもわかりませんし、チップ得たら所得にするなり心付けとして受け取るなり、自分で管理してね、ってこと。
たまに、バスキングのエージェントから出演依頼などが来ることもあります。
イベントであったり、映像出演であったり、取材だったり。そこでは勿論公式バスカーとしての出演です。そして、それらは全てボランティアです。
アンダーグラウンドでの活動は基本的には公的奉仕。
ライセンス所持者が管理元にお金を払う必要は有りませんし、マージンを引かれることも当然ありませんが・・・。(これは、各国や各団体の制度によって異なる場合もあります。)
その分、稼げるかどうかも保証はされていないということなので微妙なところでもありますね。(笑)
バスキングは自身がストップしたら、途端に収入ゼロです。
本当のスタート、本当の厳しさはライセンスを手にしてバスキング舞台に立った時から。
「バスキング活動に本腰を入れる!」と入れた時から始まります。
もちろんバスキング中の移動費なども自己負担です。(バスキング活動で得た収入を所得申請していれば、もちろん経費にすることは可能です。)
アンダーグラウンドのマークがデカデカと入ったライセンスを提示して地下鉄にタダで乗ることは、残念ながらできません。(涙)
「ライセンス持っていればバスキング移動中の地下鉄代はタダなんじゃない?」とよく言われるけど、公式奏者なだけであって地下鉄の社員ではないからね。みんな普通にオイスターカード(日本で言うSuicaみたいなもの)を使ってます。
それは、ただの健康のためじゃよ、ふおっふおっふおっ!
バスカーの中には、生活苦で路上に立つ思いでライセンス取得に挑戦する人もいます。
申請時に無職の人だって、何の社会経験もない人だって皆無ではないのです。
無職自体は問題ではなく、また社会人だから絶対安心というわけでもなく、プロキャリアがあれば問題ないわけでもありません。人間、蓋を開けてみないと誰にもわかりません。善人ばかりではない可能性もあるのです。
前ブログでご紹介した内容で「危険の要素が少しでもあればライセンスを発行しない」ということ、それは理解できますよね。
でも、時間の経過とともに人間が全く変わらないとも限りません。
万が一、ライセンス取得後の公式バスカーがトラブルを度々起こすようになったらどうするんでしょう?
バスキングも監視社会?ライセンス取得前のみならず、取得後の動向もバッチリ見られています!
バスカーの身元は国際警察によってバッチリ、チェックされるわけですが、バスキングを公式に続ける限り更新時などに定期的なチェックをされているかと思います。
悪いことをせず普通の生活をキープましょう!(笑)
前ブログにある通りに、ライセンス取得時の国際警察のチェック時に「昔、少しヤンチャしてた時代があったけど大丈夫かな〜」くらいは全然大丈夫です。(警察のお世話になってしまったのであれば、それは当然ながらアウトです!)
モヒカン頭だろうがパンチパーマだろうがアフロだろうが(筆者)、奇抜な格好だろうが普段どんな仕事をしていようが、貧乏だろうか金持ちだろうが関係ありません。
そんなところはチェックされていないのでご安心を。
逆にいうと、ロンドンのバスカーは怖そうに見える人でも割と健全っちゅうことかもね。
しかし、ライセンスを取得したから一安心というわけではありません。
発行元の管理団体はしっかりとバスカーの動向をチェックしています。
筆者が始めた頃は「出勤チェック」されていました。無断欠勤するとペナルティーなんですよ。(笑)
バレないと思うでしょう?
当時は、各ピッチをスタッフが巡回してたんです。ブッキングされている場所全て、全員分です。
なので、1ピッチ演奏中に1回はスタッフが覗きに来るので・・・1日に数回はスタッフに挨拶する機会がありました。
流石に今はそこまではしていませんけどね。
でも、以前の方がよかったかも??
だって、管理してくれてる人に日々会って挨拶し合う機会がある方が、なんとなくお互いハッピーじゃないですか?
ライセンス所持者の仲間/家族意識=人間関係、上下関係がある?
これは本当に小さい話しなんですけど、個々で黙々演奏する孤独なバスキング社会でも、いわゆる一般の職場と同じで足の引っ張り合いとか愚痴だとか陰口とか・・・悲しいことに存在するんですよ。(怖)
ただし若干です。
筆者も上からの(ライセンスバスカーの先輩からの)イビリ的な事を受けたことは、1回くらいしか経験ありません。
(なんだコイツ)みたいな、新人を下に見るような態度で接してくるバスカーに会ったことは数回あります。
まあでも、それって何処の職場環境でもあるあるですよね。なので全く気になることでもなし。気にせず「Hi!」と会うたび挨拶してればそのうち仲良くなりますから。
ちなみに我々バスカーが同僚のバスカーに接触する機会は、個人的な付き合いがない限りはブッキングしたピッチを明け渡しする際のみ。
1ピッチあたり2時間が基本のブッキング枠なので、その前後で他のバスカーと会うことになります。開始時間と終了時間、この2回のチャンスで2人のバスカーに接触します。
とはいえ、コミュニケーションを取るまでの時間はなく挨拶を交わす程度です。
時間が命のバスキングなので、開始時間直後から終了時間ギリギリまで演奏し、次のバスカーも目立たない場所で待機して「煽らずに時間ピッタリになるまで待つこと」というのが暗黙のルール。
バスカーの気持ちは皆同じ。「早く場所をどいてあげたい」「早く始めたい」という思いがお互いにあるため会話は長引きませんし、どのバスカーもセッティングやチューニング、片付けなども超早いですよ。びっくりすると思います。(笑)
バスキング選手交代時間の一瞬で、ハッピーなモチベーションになったりいやーな気分になったりします。
笑顔で挨拶を交わすか、高圧的な態度で挨拶スルーされたりお局イビりのような声をかけられるか。
雰囲気のいいバスカーや仲の良いバスカーにあうと、2言3言の雑談くらいはしますし、それもモチベーションのアップにとても良いです。
しかし、初めて会ったのに一方的に「愚痴」ってくるような人もいるのも確か。
そこで何度か聞いたことがあるのが「ムカついたからマネジメントに報告したよ!」というセリフ。
ち・・チクリ?!
バスカー同士で頻繁に揉め事を起こしたり、マナーの悪いバスカーやピッチを次の予約バスカーになかなか明け渡さないだとか何かしらトラブルを起こしていると、誰かにすぐにマネジメントに報告されてしまうみたいですね。(笑)
本当にトラブルメーカーを要注意して報告しているのかもしれないし、なかには不仲のバスカー同士でいわゆる「チクリ合い」という事もきっと存在しているのではないかと。
意外にも縦社会も存在するため、ライセンス取得年が古い人ほど威張って・・じゃなかった失礼、先輩風を吹かせる人もいます。
その手の人にはきちんと挨拶だけはして、あまり深く関わらないほうがいいです。
経験上、不平不満のような声を聞くのは始めたばっかりで戸惑ってる新人さんからか、でも大半はライセンス歴の長い・古い人がほとんどですね。それは熱意あってのことなのかなとは思うんですけど。
どこの社会も同じですよね・・・(苦笑)
マネージメント側の管理、そして監視。バスカー仲間の目。
巡回するポリスからのライセンスチェック。
更新期の再チェック。
さらに通行する人々の目。
バスキングをやると、ずーっとチェックされているということです!(笑)
[おさらい] 見た目も履歴も関係なし!絶対的に必要な条件を1つあげるなら「無害である」こと。
どんな強面でも派手ルックスでも奇抜でも、オーディションに差し支えは全く有りません。逆にイケメンだから美人だから得する、ということも全くありません。
一般的に日本の履歴書で重要視される部分に関しても、全く選考基準ではありません。
「やる気だけはあります!」と言うような熱い思いも無駄です。通用しません。
絶対条件としては、普通に公共に対して害のない生活をしているということ。
(もちろんパフォーマンスできることが大前提です)
バスキングという行為が公共の場で行われる以上、街を行き交う人々が安心して音楽を聴けるように。そんな人たちに音楽を届けるために、彼らは目を光らせてルールを設けるのです。
そのおかげで、街には平和なバスキング時間が流れているのかもしれませんね。
パフォーマンスに合ったバスキングピッチを選ぶ
ライセンス制度を取り入れている場所は色々ありますが、アンダーグラウンドの他に有名なのは、コヴェントガーデンの広場や、トラファルガースクエアのバスキングですよね。
ここでライセンスを得ているバスカーたちは、公園や広場に訪れる家族や人々のニーズにあったバスキングをしていることが特徴です。
銅像の姿で立っている人や、パントマイム、アート系などのバスカーほか、広場の遠くまで届くようにアンプを利用しステージ風に行っている演奏者もいます。
地下鉄のライセンスでは「音楽を響かせる」と言うコンセプトがありますので、ミュージシャンによるバスキングが中心となっています。
通勤通学時、お買い物時などに使われる交通機関のエリア内というのもあり、立ち止まってみなければならないようなパフォーマンスは(通行人の邪魔になるので)適切ではなく、BGM的なものが喜ばれるということ。
しかし、公園や広場となると全く別のバスキングスタイルの方がニーズになるのです。
自分のパフォーマンスのスタイルに合ったバスキング管轄を見つけて、その団体のライセンス取得を目指しましょう!
ミュージシャン向けのライセンス審査でも「やや不利かも?」と言われている楽器も
ミュージシャン向きと言われている地下鉄のライセンス。
いろんな楽器、さまざまな音楽パフォーマンスのスタイルで多くの人々がオーディションに挑みます。
こちらのオーディション突破が一番難しいのが打楽器奏者と言われています。
前回ブログで少し触れましたが、地下鉄ことアンダーグラウンドのライセンス所持者に向けた公式ピッチには、騒音問題対策として楽器制限が設けられているピッチが多くあるんです。
音のクレームはやはり大音量であればあるほど多くなります。
審査員もその面はかなり懸念していると思うので、音の大きそうな楽器というだけでも、書類選考時点で結構難しいと思われます。
私の知人のバスカーでジャンベでライセンス取得をした仲間も、スキルでなんとかライセンスを突破して打楽器でバスキングできるようになったものの、実際にバスキングを始めてみるとチップの入りが弱く、そこで改めてギター演奏でライセンスを取り直したのだとか。
本人曰く「ジャンベの時より通行人からの反応が断然優しい」とのこと。
バケツ・ドラマーのバスカー友人は、逆に「ライセンスなんか不要」として地上で黙認とされてる場所でバスキングをやっています。
そして、物凄い金額のチップを得ています。
野外の開放的な場所で演奏する事で音量の問題を回避し、そのユニークなパフォーマンス方法も受け入れられ、打楽器バスキングの成功例となりました。
同じ打楽器でも、場所・その環境によって周囲からのウケ自体も大きく変わってくるのです。
ピッチ探しは環境を観察することから
ライセンス制度もごく当たり前となってきましたが、ライセンスが無いからバスキングはNG!と言うわけでもありません。
自由こそ、本来のバスキングの姿です。
黙認された場所で周囲に迷惑をかけない場所であれば、そういったところでバスキングするのもいいと思うし、そんな姿こそ一番バスキングっぽくてクールです。
ピッチ選びの際には常に、自分のパフォーマンスと環境を考慮した上で探すと良いと思います。
周辺に音が跳ね返りそうな壁や建物もないような広場のような場所ならば、アコースティックな演奏や控えめな楽器では、音が周囲にかき消されかねません。
反響音が大きく出る可能性がある場所の方が、優しい音の弦楽器や弾き語りスタイルが向いてます。
アンプ利用や大音量の楽器の場合は、上記の逆がマッチしますよね。
忙しそうな市街地で演奏するならば、雰囲気を急かさないようなサラッと聞けるようなイージーリスニング音楽やクラシックやボッサ、軽めのポップスなどが好まれます。
フライデーナイトなど人々が陽気になりパブに出歩く夜であれば激しいロック曲やソロギタリストの超絶プレイ、通りすがりに一緒に歌えるようなポピュラーな曲の弾き語りなどが盛り上がります。
(イギリスでほろ酔い集団がバスキング前を通った際に一番盛り上がるのは、OasisのWonderwall。古いけどいまだに大合唱されます)
また、ライセンス取得に挑む際も自身のバスキングのスタイルを把握した上で適切な場所の申請へ挑みましょう。
ビートルズ最強説は、Here There and Everywhereです。
ちなみに、リヴァプールの目抜き通りである「マシュー・ストリート」も、ライセンス制度となっています。
こちらの選考基準は明瞭ですよね。
ビートルズを延々と演奏できるかどうかが一番重要です。
あとレパートリー曲数も重要そう・・・
もちろんビートルズ以外を演奏してる人もいますが、やはり彼らの活動期と同時代・60年代〜70年代のロックが中心です。
筆者もリヴァプールでバスキングを何度かやったことがありますが、やっぱりたま〜にビートルズ以外の曲もやりたくなっちゃうんですよね。でも、これはお客様(通行人)のニーズを無視したエゴですよね!(苦笑)
リヴァプールの目抜通りを歩く人なんて、現地の人以外はみんなビートルズファンなんですから。
ビートルズ一色の方が無難、というよりもビートルズを演奏すれば皆に喜ばれます!
・・・実はこれはロンドンでも同じです。
ビートルズ最強説、バスキングワールドにもあり!
道ゆく人に喜ばれることこそがバスカーにとって大事です。
In conclusion
今回はロンドンのバスキングライセンスについてや、ライセンス獲得に向けた四方山話を2頁に渡りご紹介させていただきました。
海外バスキングを目指してる方にとって、少しでもヒントになることがあれば嬉しいです。
次回は、アンダーグラウンドのバスキングシステムの中身により詳しく迫っていきたいと思います。
ご一読ありがとうございます!
ロンドン・アンダーグラウンド・バスキングとは?時代と共に移りゆく実情とスタイル