バスキングのすすめ
皆さんこんにちは。
今回は、バスカー歴14年、バスキング暮らし歴10年、総演奏時間15,000時間以上の筆者が、バスキングのススメとして「バスキングをやってよかったこと」をご紹介したいと思います。
バスキングとは
バスキングとは、街頭でパフォーマンスを披露すること。「大道芸をする」という意味です。
バスキングをやる人のことをバスカーと呼びます。
バスキングのスタイルは様々です。
弾き語り、演奏披露、伝統芸の披露、パントマイム、ダンス、絵描き、などなど。
大道芸のパフォーマンスには色々ありますよね。
ごく一般的なのは、ギターの弾き語りスタイルですよね。
日本で「ストリート」としてよく見かけるのも、ギターの弾き語りですし、「ストリートからメイジャーになったミュージシャン」と言えば、ギターの弾き語りから・・という印象も強いです。
その他は、楽器の単独演奏も多いですし、ジャズのバンドなども見かけますよね。
公園や公共施設では、パントマイム的なものが多いように思います。
全てにおいて共通しているのは、ライブやコンサートという縛りではなく、屋外でフリーダムにパフォーマンスしていることです。
バスキングを始めたきっかけ
始めに、現実的なお話しをするために、筆者の経緯をお伝えします。
少し、お付き合いくださいね!
筆者がバスキングを始めたきっかけは単純です。
すいません。(笑)
まさにその通りなのです。
ストリートで演奏してプロモーションし、ミュージシャンとして有名になりたかったから、などではありません!(笑)
ちなみに、筆者のバスキングスタイルは歌が中心で、ギターは伴奏程度。いまだに伴奏程度の枠を超えませんが・・・
10代の頃は皆さんと同じように、ミュージシャンになりたいなあ!自分の曲をいろんな人に聞いてほしいなあ!なんて思っていたのです。
流れとしては、ボーカルとしてオーディションに合格し、ステージに立ちながら、淡々と地味に、音楽をやってるんだか何なんだか微妙な日々(苦笑)を過ごしていたのですが、ある時、メジャー進出に抜擢されるというビックチャンスが!
しかし、様々な騙し騙されの人間関係の渦にまかれ、被害を受けたバンドは解散となり、マネージメントもなくなり、いろんな希望を失った筆者は、絶望となってしまいました。
今思うと、そんなことで絶望になんかはならないのですが、若かったので。(笑)
ひとりたたずむ筆者は、楽器もできず、頼る人もいないどころか人間不信気味にもなり、だけどひとりでは何も出来ない自分と絶望感に打ちひしがれ、思い切ってイギリスへと、傷心の一人旅に出ます。3泊5日の弾丸旅行!
初一人旅、初海外です。
そこで見た、演奏がお世辞にも上手くないけど笑顔で演奏するバスカーに心打たれ・・・
「あ、そうか。ひとりでやればいいのか。」
と、単純に思ったのです。
別に誰かを頼る必要もないし、バンドもいなくても自分で弾けばいいし、何かに属する必要もないし、どのみち保証のない世界なんだから、チャンスや希望が消えても問題ないじゃんと。
ひとりでやれることをやればいいし、下手でもなんでも、ひとりで始めることが大事だと。思ったのですよ、その時は。
実際に、そのバスカーは、下手だったんですよ。
しかし、下手でも、なんかこう、その笑顔とハッピーな音楽に人の心を動かす何かがあったんですよね。
なので、何の躊躇もせずに、帰国後スグにギターを買い、下手な演奏でバスキングを始め・・・
いつしか、イギリスの舞台でプロとしてスタートを切ることになってました。
バスキングは生活のため
なんとかキャリアをスタートできたものの・・・
それでも、音楽の仕事だけでは食べてはいけません。生活費の足しのために、バスキングを毎日やるようになりました。
そのうちに専用免許も取得をし、通学や、録音やその他作業があっても、バスキングを休むことはなかったですね。下手でも気にせず続けてました。
生きるか死ぬかですから、そんなことは気にしてられません。
毎日やってると、どうしてもバスカーというイメージがついてしまって、バスキングがまるで肩書のようになってしまったのですが、「流し」という響きが面白くて、「流し」と名乗りながらバーなどで演奏していたら、いつの間にか「流し」と呼ばれるようになりました。(笑)
路上生活の不況で、現実を知る
そのうち、なまじバスキングのチップで稼げるようになってしまい、一時期はすっかりハマってしまい、何年もバスキングのみという生活を続けていました。
しかし、リーマンショック以降から徐々に下降して行った経済状況はイギリスも同じです。
不況が続き、人々はそのあおりを年々受けていくことになります。
当然、(路上で行き交う)人々の生活が如実に反映されるのがチップ生活です。100人前後常に活動するバスカーたちの収入も数年でガタ落ちとなっていきます。
バスキング活動を生活の軸としているバスカーたちも、転職する人が増えていきました。
バスキングは、あくまで公共の場で通行人に音楽をお届けするデュークBOX。それ以上でも、それ以下でもありません。
厳しいことを言えば、そこから先の進展(バスキングで有名になってスターになるような展開)はないのです。こと、海外においては、バスカーはバスカーなんです。
バスキングがやりにくくなるような環境、それはイコール、自分の人生の見直しの良い機会ともなるのかもしれません。
「バスキング」を生業として考えると、世界情勢と表裏一体とも言える、自分だけではどうにもならないお仕事とも言えます。現実社会の人々の状況やフィーリングが見事に反映するんです。
どんなに良い演奏をしたとしても、社会背景によって、受け入れられるかどうかわかりません。
逆に、どんなに悪い演奏でも、人々がハッピーでバブリーならば、チップには困らないのです。
それでも、良い演奏の方がいいに決まってますよ。極論としての話しです。
自身の音楽目的を考えたり、方向性を見直したり、現実に目を向け、すぐさまバスキングの舞台から去るバスカーもいれば、反対に「そうではない、ゴールを求めてバスキングをやってるわけじゃなく、ただ演奏をしていることが好きで、音楽を街中に届けることが生きがいなんだ!」というバスカーもいます。
後者は、生粋のバスカーですよね。そういう仲間も何人もいます。
ただね、生活は苦労してますよ・・・。
バスキングを長く続けるために、一番精神衛生上にも健康上にも良いのは、バスキングに身構えず、バスキングを生活の軸にせず、趣味として行うことだと思います。
筆者も、過酷な状況の中でバスカーとして生き延びてきました。
それなりに満足して、タフな生活も自分で気に入って楽しんでもいました。
しかし、あるとき。自分自身の日常やプライベート、生活面が、かなり「非人間的」になっていることに気づきまして。
収入の見込みが読めない(保証されない)バスキングは、体力勝負。運よくチップが多く入ればいいけど、そうじゃない日は出来るだけ長時間演奏する気合いで日々を過ごします。
そしたら、予定も組めないわけですよね。バスキングを中心に生活しちゃってるから。
友達付き合いやデートの回数も少なくなっていき、他の仕事の依頼が来たらちょっと面倒になったり、その依頼を受けている間(本業の時間)もソワソワしたり、常にバスキングピッチ(演奏する場所)の空き状況が気になって、目の前にあることに集中できなかったり。
本末転倒です。
本来、自由に生活するためにバスキングをやっていたはずが、逆に自由を奪われてしまっていたことに気づきました。
ちょうど、録音の仕事が増えてきたところでもあったので、徐々にそちらにシフトしながら、バスキングに気負うことなくジャンルや場所に拘らず自由に活動するようになっていき、現在に至ります。
バスキングやりますか?
バスキングは体力勝負です。
もし、気軽に趣味として時々やる程度であれば、体力もそんなに必要はありませんが、「稼ぐ」という意識であればまず体力と精神力。
必要なのはこれだけです。
しかし、バスキングをやったからといってプロの活動につがる訳ではありません。
レーベルと契約し、日々ライブハウスで演奏したりレコーディングをして、ファンの獲得に尽力していれば、売れる保証はなくてもある日突然、植えた種から実が生えて来る希望はあります。バスキングに比べればゴールが見えやすいです。
何の保証もなく、収入の見込みも読めず、寒空の下で音響の環境が悪い場所で歌い演奏を続けるバスキング。路上からは時に批判が飛ぶ時もあります。
さて。
バスキングやりますか??
(ちょっとやってみようカナ・・)
という方は、ぜひともこのまま続けて読んでください。
また、他のバスキング記事にも詳しい情報などを更新していきますので、そちらもぜひ読んでみてくださいね!
改めますと、日本のストリートは少し華やかなイメージがあり、そこからスターの階段をのぼるような事も不可能ではないと思えるような、路上演奏って憧れのステージのひとつとも言えますよね。
海外のバスキングは、その感覚とはやや違う部分もあるかもしれません。
海外バスキングは概ね地味で過酷です。しかし、本来のスタイルであるバスキング事情を皆さんにご紹介することで、日本のストリートで得る感覚にプラスして、少し違うアピールもできるかも?しれませんので、何かお役に立てることがあれば幸いです。
バスキングを個人的におすすめするなら・・
では、「バスキングのすすめ」として、筆者がバスキングをやってよかったなあ!と思うことをあげてみます。
筆者が個人的に感じることですから、綺麗事抜きであくまで正直にいきます。
バスキングをやってよかったこと
バスキングをやってよかったなあ!と思うことは、細かくお話しすると、かなりたくさんあります。
しかしその分、かなり沢山いや〜なこともあります。(笑)
路上に生身で剥き出しの世界ですから、良いことと悪いこと、表裏一体なんですよね。
良いことあったなあ〜と思ってたら、すぐに、その真逆が訪れる感じですよ。
ま、夢がないのでここでいきなり悪い話しはやめましょう!
良いこと1、チップを頂ける。稼げるから!
ずばり本音です。(笑)
バスキングをやって良いと思えること。
それは、チップを頂ける・稼げるからです。(キッパリ!)
それ以外にバスキングをする理由はありません。
と、いうくらいに、ロンドンでは生活のためにやっている人がほとんどです。
しかし「稼げる」というのは大金が手に入るという意味ではありませんよ!
明日食うパンのお金と宿代が手に入るということです。
生きることができる!ということ。
それで十分と思える人は、やる価値ありです。
副業として考えたら、かなり生活の足しにはなりますからね。
実際のところ、チップがバンバンと稼げて、バスキングの生業だけで多少贅沢できたような時もありました。しかし、それは、国の時代背景もあり、人々の耳に演奏が新鮮だったというのもあります。
儲かるか、儲からないかという問題については、まず第一に、時代背景(社会背景)ありきです。
バブルな土地でやれば確実に稼げます。今の時代は結構、バスキング1本で生活するには厳しくなってきてるとは思います。
そういったチップ情勢以外にも、レギュラリーに毎日毎日、何ヶ月も何年もバスキングをしていると、聞いている人も見慣れて少し飽きてしまうということもあります。そのため、最初の頃は誰でも稼ぎやすいと思います。
バスカーは連日演奏をして1年〜3年経った頃から、売り上げの維持に苦労するようになると言われてます。
何より、それ以上続けていると「いつまでやってるの?生活大丈夫?」と、通行人に生活や将来のことを心配されます。(笑)
ちなみに「バスカー」って言うと日本人的にはなんとなくカッコイイ!という響きがあるのですが、海外ではそうではありません。
ただ、一般的に人々から認識されている職業(?)の一つとも言えるので、「バスカーをやっているからあの子はだめな子だ!」と言われるわけではありません。日本で例えると「いい歳してバンドやってるの?!」なんて、近所のおばちゃんに余計なお世話な言葉を投げられる心配はありません。
バスキングをしているミュージシャンも、売れないバンド活動してるミュージシャンも、他の働く人たちと同じく周りの人からリスペクトされています。バスカーです、って名乗っても、それで変に思われることは決してありません。
ただし、ミュージシャンとしての地位は最下位です。
「バスキングをやってるからかっこいい」という認識は、人々からはまずありません。
なぜなら、ミュージシャンなら誰でもバスキングくらいやったことがあるからです。というか、日常風景ですからね。構えるものでも凄いものでもありません。
だからこそ、通行人の方々から見れば、お気に入りのバスカーが毎日毎日、何年も演奏してくれていると嬉しいと思う反面、あまりに毎日「そこ」にいるような風景に見慣れてくると、「だ・・大丈夫?」と、バスカーの心配をしてしまうわけです。
次のステップ(自分のファンのためのライブや曲作りなど)に行かないのー?なんて、思っちゃうのですね。
バスキングで稼げるのは一過性、その場の生活の繋ぎとして考えた方がいいです。
しかし、音楽になんとか携わっていたい!と思う方や、生活に困って生きるか死ぬかの方には、生涯バスキングに身を捧げるのもありかなという事でおすすめします。(極端かな)
生活に困って悩むくらいならば、外に出て演奏している方がよほど稼げます。
経験上、チップが「ゼロ」という日は皆無です。
生きることは可能です!
時と場合によっては、多少の贅沢ができるようなチップ大量ゲットの奇跡も起こるかも?
良いこと2、ウケるから!(周りからではなく自分自身が)
筆者独自の目線ですみません。(笑)
バスキングは、やってるだけで「ウケ」ます。
通行人にウケるのではありません。自分がウケるのです。
例えば、自分の置かれた状況(こんな寒空の下で何やってんだろう私)とウケたり、目の前を歩く人たちの人間関係を垣間見てウケたり。
ただただ立ってるだけで(というか演奏してるんですけどね)面白いですよ!
バスキングをやると、寒空の下、またはめちゃくちゃ暑い中で、立ちっぱなしで何時間も何時間も演奏を続け歌い続け、時に罵声を浴びせられたり嫌がらせを受けたり、過酷でかなり心が折れそうになる孤独な状況が待っています。
その自らの状況をウケて楽しめないようではバスキングはやれません。
演奏前を通り過ぎゆく人々も、我々孤独なバスカーの心に彩りを与えてくれます。
幸せそうにしているカップルを見たり、手を繋いで歩くご年配夫婦を見ると幸せな気分になれます。それだけで楽しくなります。
目の前で怒って罵声を浴びせて通り過ぎる人もいますが、それもお互い見ず知らずの人です。私たちバスカーの個人の人格や人生を批判してるわけではなく、路上に佇む私たちはちょうどいい八つ当たり台なのです。
そんなことで怒ってはいけません。「何であんなにキレてるんだ!?」と、心の中でほくそ笑む(ウケる)こと。
そして、見ず知らずの人に罵声を浴びせられる自分ってかわいそうだな!と、自分で労うしかないような状況にウケましょう。
そして(なんて自分って心が広いんだ!)と自分に突っ込んでウケましょう。
何万人という人が目の前で通過していくわけですから、その一瞬の目に映る人々の姿の中には、いろんなドラマが存在します。
通り過ぎる人の雰囲気を見て、その人たちのドラマを妄想してみます。
延々と通り過ぎていくわけですから、数秒の人生ドラマを創作しても、尽きることはありません。
路上で起こった出来事は全て、友達との茶飲み話しのネタにしましょう。
起こること全てに「ウケる」という感覚があれば、どんな過酷な状況であってもバスキングはただただ「ウケる」活動となるので、気分次第で毎日本当に笑顔の連続になりますよ。
そのほか、筆者の場合はギターケースに入るのがチップだけではなく、様々なものが入っていました。
花やメッセージという一般的なもの以外、お弁当やパン、サンドウィッチ、チョコレート、差し入れのカプチーノや、スケート場のチケット、夕飯に食べようと思っていたであろう食材や、時にはぬいぐるみや、マフラーや時計も!
ウケますよ〜
でもね、「わ!ハンバーガーがギターケースに入った!」って、そのおかしさを誰とも共有できませんから。一人ですからね。
だから、一人で遠慮なく「ぶっ!」と吹き出してます。通行人に見られてますが気にしません。笑いたい時は笑いましょう。
でも、見ず知らずのバスカーに「自分が使おうと思って持っているもの」を、あげますか?私なら、自分のために持って帰ってるチョコレートなどを、路上の知らない人にあげることは考えもしないかもしれない・・・
そういった人の心に触れることができて、実はウケるどころかとても感動することだらけなんですよ、バスキングの現場って。
良いこと3、人間との距離。人の優しさを如実に感じられる
やはり人間との距離感。これが良いですね。
バスキングはステージと違い、オーディエンスとの距離がすごく近いです。
場所によっては、毛穴見えるんじゃないかくらいのスレスレで人が横切っていく時もあります。
目と鼻の前を人々が通り過ぎるわけなので、時に通行人さんからすごく鬱陶しそうな顔をされることだってあります。
そんな距離なので、当然、悪い人もいれば怖い目にあうこともあるかもしれません。
しかし、その距離だからこその優しさや愛情も感じられるわけです。
路上で見知らぬ人に愛想笑いする人なんかいませんよね?
通行人が笑顔になるということは、バスカーが何らかの笑顔の要因を与えているということなんです。
オーディエンスとして見るならば、自分のパフォーマンスまたは存在に対して本当に喜んでくれたのかどうか、如実にわかります。
通行人さんが笑顔で声をかけてくれると、泣きそうになるくらい嬉しいですよ。
また、「悪そうな雰囲気の人」がバスキングのピッチ近くにいたりすると、他の通行人さんが「アナタ、大丈夫?」と、こちらを心配して声をかけたりしてくれます。
自分だったら、何らかのトラブルに巻き込まれたくなくって素通りしそうです。あるいは、気にも留めずに通り過ぎることの方が多いかもしれません。
ですから、この辺は本当に驚きました。というよりも、尊敬しましたね。
何かこちらの様子を察して、声をかけてくれる人ってすごく多いのです。
良いこと4、街のカフェでサービスしてくれることも
カフェに入ってコーヒーを頼むと、サービスしてくれる時も多いです。
「さっきバスキングしてたよね?」
そんな感じで、バスキングを行っていた場所周辺のお店の人に、親切にされる時が結構あります。
毎日毎日、路上で演奏してると地域の名物〇〇さん、みたいな感じで覚えていただけるのか、親しみを持っていただけるのか。ありがたいですね。
しかし、この辺は日本に例えるとどうでしょう・・
ちょっと怖い?ストーキングされない?と感じるかもしれませんね。
でも、海外は意外にサッパリしてるというか、いわば単純なので、悪い人はその場で(バスキングの場所で)悪さしようとするんで、覚えられていることがマイナスとなることはありません。
それが絶対とは言いきれませんので、自己防衛は大事です。
ただ、経験上、街中の名物みたいな感じで親近感を持っていただき、悪い思いをしたことはありません。
バスキング・ピッチ周辺のカフェに行くと「あ!さっき演ってたよね?」と、何かしらのサービスをいただくことが割と多いです。
ただし、ギターを背負ってる時のみ。
ギターを持ってないと、気づかれません。(苦笑)
良いこと5、耐久性が身に付く
バスキングのおすすめ点、やって良かったことは、まずこれに限ります!
今までの例は、本当に個人的に感じたことでしたが、ミュージシャンならばバスキングの利点は、ズバリ、耐久性が身につくことです。
筆者は最長10時間バスキングしたことがあります。
当然ながら、トイレに行けないので水は飲まずにやります。
流石に10時間は、最後の方では頭の中真っ白のわけわかんないような状況で、手と口が勝手に動いてるだけみたいな感じでしたが。(笑)
嘘だろと思いますでしょうか?
それができるのは、ただの「慣れ」なんです。
体力的に10時間、演奏を続けるのは「俺なら自信あるぜ!」って思う人もいると思います。仕事と思えば、できそうですよね。
ただ、歌を歌ってて水も飲まずに?喉は枯れないの?って思うかもしれませんが、「水を飲まないと喉が枯れる」のも実は「慣れ」です。水を飲んでると喉が枯れにくいから潤そう、という習慣的なことです。
だから、飲んでない状況でも喉は枯れないし歌えるとわかっていれば、歌えるんですよ。
*熱中症などの防止のために、人間が適度な水分を摂ることは重要なので、真似しないでくださいね!(今は私もそんな無謀はしません笑)
人間の肌も、たとえば普段から化粧水や乳液を塗りお化粧をしていると、石鹸で顔を洗って放置なんて、とてもじゃないけど考えられませんよね。
化粧しないのはまだしも、何かしら化粧水くらいはたきたくなります。そうじゃないと顔が突っ張ったり、カサカサしちゃいますよね。
でも、子供の頃はどうでしたか?
顔洗った後に化粧水なんかはたいてませんよね。
子供の頃は肌の状態が違うから当然といえば当然かも。でも、肌ケアなんてものに概念が全くないようなお父さんはどうでしょう?
お風呂で体と一緒に顔を洗って終わり!ってことも多いのではないでしょうか。時間がかからなくていいわよねっ!って、思っちゃいますよね。
例えればそんな感じなんです。
再度、強く申し上げると、流石に10時間水を飲まないっていうのは絶対に真似しちゃダメだし、2時間、3時間と「水も飲まずに歌う」ということを選択することは絶対にしないでほしいのです。
水を飲んだ方が、人間の体には良いに決まってます。
ただ、水を飲まないと喉が枯れる(声が掠れる)ということはありません。
2時間のレコーディング時に、自由に水を飲んでいいと言われたら、歌い終わるたびに飲みますよね。喉も潤いますから。
でも、水を飲めない状況だったとしても、歌えるし、特段、水で潤さないから声が掠れるというわけではないんです。あくまで、喉は本人の体質だったり、体調だったり、耐久性だったりで、真っ直ぐに伸びたり枯れたりするだけのこと。水は、気休め程度。
バスキングのように、自分が手を止めない限り、頻繁に水を口にすることができない状況だと、水をしょっちゅう飲まなくても枯れにくい声になっていきます。
ただ、水分を摂ることは体にも喉にも良いことですから、上記はあくまで「慣れ」ということの参考例としてお話ししただけですので、水は飲んでくださいね!!
ただ、一点、やめた方がいいことを主観でお伝えします。
歌が終わるたびに、喉に吹きかける薬をしゅっ!とやる人がいますよね。
あれは、多分やめた方がいいです。(以下省略・・・)
改めまして。
イギリスのバスカー達がバスキングをやる時間は、平均して4時間から6時間です。最低でも、2時間以上はやります。
それだけ毎日やってると、持久力も身に付きますし、楽器を奏でる指や腕、歌なら喉などの耐久性がつくので、長時間のレコーディングやツアーも、気構えることなく(疲れやプレッシャーを感じず)やれます。
これはすっごく利点です。
例えばライブやレコーディングをやる時に、もう、目の前にマイクがあるだけで「うわ〜、嬉しい!」ってなりますよ。
ちなみにバスキングで一番きついのは、サックスやフルートなどの肺活量を使う楽器や、体が楽器である歌手(弾き語り含む。ただし、マイクを使っていない人に限る)です。
演奏などによる外傷的な過酷さや痛みとは、また違った内側の疲労があります。なんというか、妙な疲れなんですよね。
屋外なので、音はどんどん逃げていきますんで、気づかないうちに相当な声量を使っています。
カラオケやスタジオで、マイクを使って歌うのとも全く違いますし、2時間のライブで、トークを入れながら歌うのとも比較になりません。
バスキングはノンストップです。それを毎日やってると、やはり体力の消耗や喉へのダメージはかなり激しいです。
注意したいのは、喉がもともと弱いという人は、無理なバスキングは絶対にやめた方がいいということ。
体質は、慣れとは関係ありません。そこだけは自己管理でやるやらないを決めたほうが良いです。
歌い慣れている人や喉の強い人でしたら、仮に潰れても回復したり、ペース配分しながら強靭な喉へと鍛えていくことができますが、喉が弱い方や、歌い慣れてない方ですと、バスキングで喉が潰れたら回復できない可能性もあります。
全ての人へ対して、「長時間演奏した方が耐久性がつくのでおすすめ!」とは言えません。
例えば、強靭な喉を持つオペラ歌手の知人がいますが、オペラでバスキングもやっています。ただし、週に1回しかバスキングをやりません。
どれだけ喉が強い歌手であろうとも、本業に少しでもリスクがあるような無謀は絶対にしません。
演奏者も同じく、ペース配分があると思います。
ただ単に無茶をするのは、全く意味がないどころか自身の大事な肉体や喉を粗末にしているだけです。
自らの体を知った上で、バスキングを鍛錬の場とするのはプラスになるのでお勧めしたいと思います。
ただし、何度も言いますが己を知った上での行動として、自己責任でお願いします!
良いこと6、自己PRのひとつになる
日本のストリートシーンは、自己PRの場所として認識されていますよね。
プロモーション的な意味合いを持って街頭演奏している人も、多いと思います。
ですので、「バスキングやってます」っていうのも、いわば自己PRのひとつになると言えます。
「打ち込みして音楽作って、動画投稿してるんだ!」っていう友達がいたら、楽曲作れるのかな、撮影とか好きなのかな、レコーディング関係やIT関係詳しいのかな?ってイメージして、友達の個性に繋がったりしますよね。
「ストリートで演奏してるんだ!」っていう友達がいたら、ギターやれるんだなあとか、一人で知らない人の前で生演奏するなんて堂々としてるなあとか、なんとなく活発そうなイメージが湧きますよね。
パーソナリティーの紐付けとしては、とっても良いPRだと思います。
注意してほしいのは、バスキングをすることは自慢にはなりません。
日本人の間では、バスキングって聞くと、まだまだカッコイイ位置付けにある言葉です。
それも、日本でおける「ストリート文化」が、かっこいい物として認識されていることが多いからなんですよね。
「俺、バスキングやってるんだぜ!(ドヤ)」っていうのも、日本人に向けては良し!としても、間違っても、それを世界に発信してはいけません。
最初の方に言った通りに、海外におけるバスキングは、日銭を稼ぐため・生活のため。あるいはちょっとした腕慣らしのため。
特別なものでもなんでもありません。
そして、ミュージシャンであれば誰でも普通にやっている(経験している)ことであり、バスカーという名の生業を音楽業界の中で考えると、その位置付けはかなり低いというのが現実です。
良いこと7、止めるも続けるも自由
バスカーは組織に属しているわけではないので、演奏を止めるのも続けるのも自由です。
バスキングを引退するのも、休業するのも復帰するのも自由です。
1ヶ月旅行行きたいな〜と思えば、行けばいいだけ。
上の方の許可はいりません。
職場はひとりなので、煩わしい人間関係もなし!
演奏をスタートして、20分でやめるも、2時間続けるのも自由なので、突然デートのお誘いが入れば、当然、デートを優先させたって構いません。
ただし、それが生業だった場合、やめたら収入はゼロです。
バスキングに付随する「自由要素」はかなり高めですので、極めてフリーダムな生活に近いとも見えますが、自分の気持ちひとつでなんでもやれてしまうような「自由な環境」とは、箍が完全に外れてしまっている世界にいるということ。
本当に人間が伸び伸びと羽ばたけるのは、ある程度の規制の中で「自由」にやるということなんです。
凧が大空を羽ばたけるのは、地上で手綱を持ってくれている人がいるからこそ。
その糸を手繰り寄せてくれる人が居なければ、地上には戻れませんし、糸が切れちゃったらどこへ向かうかわかりません。
バスキングの持つ「自由」とは、自分で凧(自分)の手綱をどこかにかけて、自分で抑制しながら空を飛ぶということです。
自分の目的や、本来の生活はブレずに重きを置かなければならないということ。
そして、投げ銭であるチップには税金がかかりませんが、払わなければならない税金(イギリスであればカウンシルタックスなど)は払い、やりくりも考え、生活の基盤はきちんと整えておきましょう。
自由を履き違えると、それは本当の自由ではなくなることを肝に銘じた上で、フリーダムなバスキングライフを目指しましょう。
イギリスでは?
先に伝えた通りに、イギリスでは、バスキングはミュージシャンであれば一度は通る道の一つです。
バスキングと、ステージなどの仕事とは、全く別で、それらを関連づけて活動している人はいません。
例えば「バスキングを経験してスターになった人」は多いですが、「バスカーとしてスターになった人」はいません。
あの有名人もイギリスでバスキング経験あるって聞いたよ?なんて話しがあったとしても、それは「誰もがバスキングを経験している」と言うことであり、バスキングの活動を関連づけて有名になったのとは全く違うのです。
日本であればストリートで人気になり、ストリート演奏(路上ライブ)を続け、ファンを増やし、メジャーデビューという道は確実に存在します。
しかし、海外でバスカーが大スターになったということは、まず聞きません。あくまでステップアップの一環でやるのが正解。
バスキングをやっていると、様々な方から声がかかります。
レコーディングやイベント出演のオファーなどの声が来ることもあります。
それが正しいチャンスならば、すかさずそのチャンスを掴み、方向転換をするのも大事です。
また、「あくまで通行人の皆さんに演奏をお届けするんだ」という姿勢で挑むことが、海外では一番大事です。
自分ではなく、通行人の皆さんやその街が主役であり、その主役へ花を添える気持ちでバスキングをすることこそが、真のバスカーの姿だと言えます。
まとめ
日本でも海外でも、一度はバスキングを体験してみることをおすすめします。
バスキングには嫌な思いをすることだってありますが、それ以上に利点がたくさんあります。
追々、また別のお話しにてご紹介させて頂きます。
最後までお読み頂き有難うございました。